【以下TURNS:ターンズのサイトから転載】
この秋、新たな事業拠点を広島県福山市に構えたウェブクリエイターたち。海辺のコテージを思わせるオフィスで、東京発のプロジェクトを進めてゆく。ゆったりとした住環境で、仕事に新たな価値を付加すべく構想を練る2 人に話を聞いた。
「働き方改革」に関する法案が施行され、多様な働き方が生まれつつある中、広島県福山市では、9月2日から「ワーケーションふくやま体験」を開始した。ワーケーションとは、「ワーク」(働く)と「バケーション」(休暇)を合わせた造語。首都圏の企業が、福山市で休暇を兼ねて働くスタイルを実践することで、首都圏からの企業誘致や移住につなげたいという試みだ。2020年3月までの半年間のワーケーション体験をスタートさせたのは、東京に拠点を置くUXデザイナーで有限会社フトン代表の藤田総宣さん(43)と、藤田さんと一緒に仕事をしてきたフリーランスのプロダクトマネージャー、宮内省悟さん(44)。目の前は海という、抜群のロケーションを誇る田尻町の別荘で話を聞いた。
藤田さんは学生時代から仲間と3人でウェブサイト制作の仕事をしており、01年にフトンを創業した。宮内さんは神戸出身。東京のIT企業に勤務後、13年にフリーランスに転身。ここ一年は藤田さんと同じプロジェクトに携わっていた。18年に市が全国初の取り組みとして、民間企業から兼業・副業限定で募集し、映像技術会社の野口進一さんを戦略推進マネージャーとして採用。その野口さんから「海も山も近い、素晴らしい環境なのに、利便性が良く新幹線も停車する。そこで仕事をしてみないか」とワーケーションの話を持ち掛けられた藤田さん。2年前から社員全員がリモートワークで仕事をしており、都内にあるオフィスはミーティングに使う程度だった。自身の住まいを神奈川県内に移していたこともあり、東京の仕事を、福山市に住んでリモートワークでこなしてもいいのではと考えた。藤田さんは、すぐに宮内さんを誘った。
福山駅前のコワーキングスペースHARAPPA
福山市のことを知らなかった2人だが、今は「一つの都市として整っている。仕事とまち、素晴らしい住環境があり、まとまっているところが魅力」と思っているそうだ。新規事業に取り組む他、2人が共同でスタートさせているブロックチェーン(分散型ネットワーク)に関するプロジェクトについて「オンラインサービスの利点、場所を限定しないことを確かめたい」という思いもあったという。宮内さんは「イノベーションは、異なる文化やモノ・コト等が交わった所に生まれると思っているので、福山という文化に触れる事で『新結合』を生み出せる可能性は十分にあると考えている。こちらで発掘したメンバーと新たに協働し、『福山バージョン』の新規の仕事もできたら」と期待。東京発の事業を、福山で醸成し、構築していこうと意気込んでいる。本格稼働はまさにこれからだが、「福山らしい事業」を目指し、地域の人々や子ども、企業と積極的に関わりたいと思っている。そのために市が全面的なバックアップをしてくれるのは、ありがたく心強いと感謝している。
サイクリングが趣味の宮内さんは福山のサイクリング愛好家が田尻発着で行ったイベントにも田尻のこどもたちとともに参加
釣りが得意な藤田さんと、自転車が趣味の宮内さん。藤田さんはさっそく釣った魚を飲食店に持ち込み、調理してもらったそう。宮内さんはしまなみ海道のサイクリングを心待ちにしている。「福山の豊かな自然環境は、ライフスタイルやクリエイティブな考え方にもいい影響を与える」と笑顔。「ネットは便利だが危ういもの。我々が福山市で実際に活動していることを、SNSに頼るのではなく、リアルに伝わる方法で発信していきたい」と話す2人のワーケーションは、始まったばかりだ。